こんにちは。『Gunosy第10期下半期締め会』での表彰式で見事栄冠に輝いた社員のインタビュー、第2回となる今回はエンジニアを対象としたBEST ENGINEER AWARDに輝いたふたりを紹介します。
こちらのAWARDは「新しい取り組みへのチャレンジで課題解決に貢献した」人に贈られる“CHALLENGE”と「日々の地道な改善を行なうことで持続的な事業運営を支えた」人に贈られる“KAIZEN”があります。今回、KAIZENを受賞された鈴木さんはなんと、総合MVPにも選出されています。そしてCHALLENGEを受賞した大竹さんは入社2年目の若手のホープ。ふたりはどんなお話を聞かせてくれるのでしょうか。
BEST ENGINEER AWARD CHALLENGE
大竹さん(奥)/Gunosy Tech Lab Media ML
東北大学情報科学研究科では自然言語処理を研究。小説や「赤ずきん」のような世界の民話といった「物語」の解析やモデル化などに取り組む。物語をコンテンツに置き換えて世の中の人に届けたい、という想いから2021年、新卒としてGunosyに入社。趣味は読書で好きな作家は村上春樹。中でも初期の短編集に心惹かれるGTLきってのハルキストである。
BEST ENGINEER AWARD KAIZEN&総合MVP
鈴木さん(前)/広告技術部 Gunosy Ads
東京工業大学情報工学部から奥村研究室に進み、自然言語処理の研究に勤しむ。その後、新卒としてサイバーエージェントに入社。広告効果計測ツールの開発などに携わる。2018年、大学院の研究室が一緒だった現執行役員の久保から誘われてGunosyにジョイン。趣味は大学からはじめたテニスで、スクールに通うほど打ち込んでいる。
広告も記事も同じ方向を見ている
ーこの度はBEST ENGINEER AWARD受賞おめでとうございます!
大竹・鈴木:ありがとうございます!
ーまずGunosy入社までのストーリーを聞かせていただきたいです
鈴木:僕は2018年にサイバーエージェントから転職してきました。きっかけは大学院の研究室で親しくさせていただいていた久保さん(現執行役員)に誘われて。当時のGunosyは広告部門の人数が少なくて、セールスサイドの頑張りに応えるためにも規模拡大を図っていた。それでサイバーで広告をやっていた僕に声がかかったという経緯です。
大竹:私は2021年4月入社の新卒になります。大学院では自然言語処理を研究していたのですが、その中で特に「物語」に興味を持つようになり、主に「シンデレラ」や「赤ずきん」といった世界の民話を対象として、物語の中の重要なイベントを予測したり、物語と物語が似ている度合いを計算したりする研究に取り組んでいました。
ー面白そうな研究ですが、Gunosyへはどういう経緯で?
大竹:ニュースは誰かの物語を直接伝えたり、物語を媒介したりするコンテンツだと思っています。こうしたコンテンツの推薦に興味があり、推薦システムの研究開発に力を入れている点に惹かれ志望しました。実際に研究開発チームが独立していて国際会議に論文を出したり、学会のスポンサードをしていた面にも好感を抱きましたね。
ー現在の仕事について教えてください
鈴木:広告配信ロジックの構築や改善、運用がメインですね。代理店だった前職との大きな違いはメディア本体であること。サイバーエージェントでは計測ツールの開発に取り組んでいました。そのツールを導入してもらうビジネスモデルだったんです。グノシーはメディアなので実際に自分の開発で効果が上がればそのまま収益につながる。ひと言で広告といってもずいぶん違うジャンルです。
大竹:私はグノシーアプリに掲出される記事やプッシュ通知で送られてくる記事のユーザー体験最適化配信ロジックを開発しています。大量のユーザーのクリックした、しなかったというデータを解析。ユーザーに対して、興味を持ちそうな記事を予測するシステムの開発ですね。
鈴木:広告もユーザーが見たいものを出すようにしているし、記事もユーザーが読みたいものを掲出するというところで、見ている方向は同じだよね。
大竹:記事と広告は独立して分かれているものではありませんよね。だから相互に影響する側面もあると思っています。
ーどちらも難しそうな仕事ですね…
鈴木:技術的にはトラフィックが多いので、いかに短い時間で出すかが勝負になりますね。レスポンスタイムにこだわらないと広告は見てもらえないので。あとは記事の間に挟まる広告は一定のクオリティを担保しないとメディア価値を毀損しかねません。ただ、それについては審査部が厳しく目を光らせてくれているので。
大竹:たとえばですが評価の粒度が荒いと、ヘビーユーザーの行動に引っ張られてしまいがちな点は気をつけないといけませんね。実際のサービスにはいろんなユーザーがいるわけです。どんなユーザーがいるのかを細かくわけて、何が実際に起きているかを見ていく必要があると考えています。
エンジニアの領域を超えて活躍する
ー今回の受賞はどのような取組みが評価されたのでしょうか
鈴木:いちばん大きな成果はAWSのインフラコストを削減して、さらに他のチームでも実施できるよう整備した点だと認識しています。さらにどうすれば全体的に売上や収益面で貢献できるか、プロダクトの成長を促進できるかを考える場を作ったり、自分からもアイデアを出したりといった面も評価いただけたのかな、と。単なるエンジニアの職域を超えて行動した半期だったと振り返っています。
ー鈴木さんは昔からそういうタイプ?
鈴木:そうかもしれません。エンジニアリングは最も得意な分野ですから、そこでスキルを発揮するのはもちろんですが、そのスキルを発揮する手段のひとつにプロダクトの成長や売上を伸ばすことがあると考えていて。割と以前からエンジニアリングだけでなく全体で取り組むタイプだったと思います。
大竹:Gunosyはプロダクトがあるので、割とそういう思想のエンジニアが多いかもしれません。もちろん人にもよるんですけど、共通しているのはプロダクトを成長させようという意思ではないかと思います。
ーAWSのコスト削減が成功した要因は?
鈴木:大きな要因が2つあります。1つはストレージのコスト。二重管理していたので片方をすべて安価なストレージに移動させました。これですごく削減がはかどりましたね。もう1つはネットワークコストで、AWSの内部通信におけるリージョン間の通信をほぼゼロに。かなり大きなデータを載せて通信していたので、これも大幅削減に繋がりました。これに加えて日々の削減活動をチーム全員で粛々と続けていった結果だと思います。
ー大竹さんの受賞理由も聞かせてください
大竹:たとえばニュース記事全文を三行に短くまとめる、みたいな作業は従来人間がやっていたのですが、これを機械学習モデルを使ってやる自動要約という技術があります。昔から脈々と研究が続けられてきた分野なのですが、2017年ごろに出てきたトランスフォーマーというアーキテクチャと、それを利用した事前学習済み言語モデルの登場以降、要約の精度が飛躍的に上がったんですね。それを今回、社内に持ち込んだんです。
ーそれまでGunosyになかった技術なんですね?
大竹:そうですね。自動要約を利用してどういったユーザー体験の向上を目指していくか、というとこれはまだ構想段階なのですが、全文読むのが大変だけどタイトルだけではわからない記事が三行でサッと読めるようになります。政治や経済といった硬めのニュースも楽にわかる。全文読まなくてもいいというのはユーザーにとってうれしい機能なんじゃないかと思いますね。
鈴木:横で見ていて思ったけど本当にすごい技術だよね。何もないところから三行に要約するのは大変だけど、機械がたたき台を作ってくれるならそれを見て人間がよりよいものへとアレンジしていけるしね。
大竹:トランスフォーマーと事前学習済み言語モデルに関連する技術はもともとチャットなどいろんなところで使い道がある、ということで実際にあちこちで成果が上がっていたんです。その潮流を受けて、社内でもそれらの技術の知見を蓄積していけないかという議論があり、それこそチャットボットを作るとか、画像にも適用できるのでそのあたりも検討しました。その中で最初のチャレンジとしては、ニュースキュレーションアプリという特性を踏まえた自動要約にフォーカスすべきではないかと。昔から関連論文は読んでいたし最先端の状況をある程度理解しているという背景から任せていただけたと認識しています。
ーまさにTech Labの面目躍如ですね
大竹:最新の学術領域の知見も取り入れて、上手くいくかダメなのかの検証は常に行なっていますね。研究とインダストリの間のすごくいいポジションで働いていると実感しています。アカデミックばかりでもなく、ビジネスだけでもなく。いいところ取りの度合いは難しいんですけどね。中途半端にならないよう気をつけながら。
新しい技術を導入する障壁が低い環境
ーエンジニアにとっては働きやすい環境ですよね
鈴木:Gunosyはやっぱり、いろんなチャレンジができる会社ですね。もちろん全く関係ないことはやりづらいですけど、基本的には何にでも挑戦させてくれます。最新技術の導入についても、それが実際にいいものだとわかればどんどん入れていこうという風土。加えて会社全体のレベルも高くて新しいものをみんなでキャッチアップしていこうとするので。進化に対する柔軟性はかなり高いと思っていますね。
大竹:Tech Labも同じで、実験や分析で根拠を示せば納得してもらえる環境です。しかも立場も関係ない。数字でも、論文で調べた過去の知見でも、ちゃんとロジックが成立していれば基本的に受け入れてもらえます。透明性…という言葉があっているかわかりませんが、意思決定のプロセスも明確。チームの人たちに納得してもらえる理由を提示できればGOが出ます。しがらみなくやりとりできるところも気に入ってますね。
鈴木:この風土は部署関係ないよね。
大竹:鈴木さんから新しい技術の話がでましたけど、経営陣の木村さん、竹谷さん、間庭さん、西尾さんも新しくて面白くてすごいものがあればどんどん試していこう、というマインドがありますよね。上の人たちがそうなので、現場はめちゃくちゃやりやすいです。
ーマネジメントというかチームの雰囲気は?
鈴木:いま僕のチームは7人で、マネージャーが他にいるので僕はリードエンジニアなんですね。だからヒューマンマネジメントは必須ではないのですが、チームの技術力を上げるのを目標にすると自然と人のマネジメントも必要になってくるのではないかと思っていて。たとえば技術1on1でも、どういうふうに成長していきたいかという話になったり何をやっていくべきかという相談を受けたりします。
ー鈴木さんらしいエピソードですね
鈴木:さっきも言いましたが自分が割と技術だけでなく枠を超えるタイプなので、その思考をみんなに広めたいという思いはありますね。それで次に何をやるかをみんなでアイデア出しする場をつくったり、チーム全体で成果を出せる環境づくりを意識しています。
大竹:Tech Labも個別のタスクに関しては個人で進めることが多いのですが、個人の目標がチームの目標に紐づいているので自然と全体に目配せする空気が醸成されています。それこそマネジャーとの1on1も頻繁にありますし、週イチのブレスト会ではチーム内での課題に対してざっくばらんに話したり。アイデア出しやテーマを絞って調べたり、考えるのもチームでやっていますね。
ーでは最後に、好きなGunosy Prideを教えてください
大竹:私は「サイエンスで機会をつくる」です。そもそも私、研究分野での新しい知見を産業ドメインに持ち込んで、実世界にいる人たちに喜んでもらいたいという意識がありまして。まさにそれについて言及されている言葉だと思うんです。新しい発見や知見を上手くニュースアプリに持ち込む。私自身のモチベーションと上手く合致しているんですよね。
鈴木:僕は「逆境に熱狂せよ」ですね。逆境って、言ってみればピンチじゃないですか。で、ピンチって底だと思っていて。底であればそこからあとは改善して天に上がっていくだけだろうと。いい方向に向かうしかないですよね。そこをみんなで一丸となってやっていくというのは自分の中では言葉として好きかな、と。
ーおふたりともありがとうございました!